暗闇坂の人喰いの木 | ♪♪♪♪ |
大長編御手洗潔・第一作。 横浜・暗闇坂。元刑場のこの地には、「呪われた大楠」と言われる木が立つ。敷地内にこの木を持つ藤並家で、屋根の上にまたがった格好で死んでいた男が発見された。 |
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それまで短編・長編おりまぜて不定期に刊行されていた御手洗ものが、この作品からしばらく「年一冊・大長編」という形で刊行されることになり、形式的に言って御手洗ものの転換点となった作品です。 さらに以後の御手洗ものにおいて特殊な位置を占めることになる、女優・松崎レオナが初登場します。作品スケールも、時間・空間的な広がりをみせ、大長編らしく仕上がっています。 内容としては猟奇的でスリリング、さらに島田的、といった感じでしょうか。本格ミステリ的な魅力をたっぷり見せてくれた上、破格のトリックも堪能させてくれる、実に「本格」的作品です。考えてみればこの作品、島田本格としては(『異邦の騎士』は別として)『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』以来の長編。それも大長編です。島田荘司本人が述べているとおり、それまで「売ることも必要」と社会派トラベルミステリを沢山書いていたわけですから、この作品がその反動としていかにも「本格」的なのは当然なのかもしれません。『暗闇坂の人喰いの木』には、それまでの短編や、これ以後の長編に多少なりとも見られる社会性もほとんど見られません。 猟奇性というのは島田作品を読む上で、忘れられないキーワード。この作品はそれが過剰なまでに表われています。ショッキングでケレン味あふれる死体描写、血の呪縛といった味付けは、日本式ミステリのお家芸ですが、そのお家芸を激しく意識しているようにも見受けられます。横溝正史の作品からとったと思われる作品タイトルも意味深ですね。しかしそれにはとどまらず、実に島荘的、御手洗的な世界観を構築している点はさすが。敬意を表明しつつ「ムチャクチャ」という人もいますが(笑)。 みどころ。石岡君の狼狽っぷり。裏を読むならこの作品、石岡君をいじめまくるために書かれたのかも・・・ |