夢見るようなエッセイ集
新・異邦人の夢 ♪♪♪#
1989年に刊行された初期エッセイ集『異邦人の夢』を再編集したもの。初刊行時には収録されていなかったテキストの追加、掲載順の変更、加筆・訂正などが行われている。

 島田氏のエッセイ集は面白い!とは私が常々言い続けていることですが、この『新・異邦人の夢』も、もちろん面白いです。島田氏の地なのかなんなのか、大変くだけた文章が読めるのも楽しい。特にロンドン滞在記など、ペンが突っ走っちゃっています。なにせヤマダちゃんですから。ヤマダちゃん。(ご一読あれ)
 初期エッセイ集ということで、現在ではなかなか読ませてもらえない自動車の話や占星術の話なども収録されています。特に再編集にあたって追加された「吉敷竹史のホロスコープ」「加納通子のホロスコープ」などは、気になる方もあるのではないでしょうか?
 私も含めたファン歴が若い人にとって、島田荘司のイメージは「重厚」(または「気難しそう」?)そのものでありますが、氏にはこんな「軽妙」(「軽薄」にあらず!)な一面もあるのだということを実感させてくれる一冊。初刊行が十年以上も前ということもあり、古くなってしまったテキストもありますが(日本縦貫道の旅行記など・・・)、現在の島田氏の活動を理解するという意味でも、おすすめの作品です。
 最後にひとこと。この本に収録されている「タイムマシン」という一編について。ほんの3ページばかりと短いですが、とても素敵な文章です。あまりにもよくできた話で、エッセイと言うよりショート・ショート的。実際、本当にショート・ショートなのかも知れません。でも素敵。