2000年型島田荘司・発進
季刊 島田荘司 vol.01   
 御手洗新作ほか、島田荘司てんこもりの個人媒体、創刊号。この号全体を貫くのは「江戸期から今日にいたるまでの日米関係」(「後書き」より)。

 

 それでは、主だった記事の解説を進めましょう。なお、参考としていつもつけている「五段階評価」は、『季刊・島田荘司』に限っては小説のみにつけさせて頂きます。雑誌としての体裁をとっているということもあり、全体にたいする評価というものは馴染まない気がしますので。

「山手の幽霊」(♪♪♪#)
 書き下ろし御手洗中編(長さは長編に近い)。本書帯には「御手洗潔再臨」と記されているのですが、確かに長い間、彼と石岡君の活躍する作品のお目にかかっていなかったような気がしますね。そのせいもあるのか、何やらファンサービスいっぱいの一編です。島田荘司という作家は、ファンの喜ぶというか、ニヤリとさせるようなツボをよく心得ているなぁと感心してしまいます。余程ファンレターや同人誌などに目を通しているのでしょうね。
 ミステリとしてもなかなかに面白い。ちょっとした物理トリックが用いられており、島荘風味がピリッと効いてるな、といったところ。ただ、少々小粒という印象を抱かせるのは残念でした(トリックについても、賛否が出るかもしれません)。ネタが小粒でも、アレンジのしようによってはかなりの成功を収める作品が出来るはずですから。
 とはいえ、テーマなども含めた総体で見ると、やはり島田荘司の作品、手堅くまとまっています。

日本学の勧め
 評論。中心となるテーマは日本の司法に関して。幕末、明治から現在に至るまでの日本の歴史を通して、日本の司法制度の過去、現在、未来を論じています。
 いつもながら島田荘司の文章の説得力には驚嘆しますが、その説得力を補強する証拠に乏しい気がします。例えばこの文章中にも、身分制度に縛られた下級の階層にあった人間達は慢性的に激怒しており、その激怒が指導者達に利用された、とありますが、ここに歴史学的な証拠(文書史料など)は一切示されません。理不尽に下級に押し込められているのだから怒るだろう、といった判断は現代だから成立するわけで、当時もそうだったかというと断ずるのは極めて危険です。このことが、なるほどと思う一方で、ホントかな、という感じを抱かざるを得ない一因ともなります。参考文献の一部でも、是非書いておいてもらいたいです。

新小説「金獅子」世界への招待
 次号より連載開始、と予告されている時代小説(!)「金獅子」のイントロダクション。横浜の歴史の紹介が主で、初めて知ることも多く、「金獅子」には大いに期待してしまいます。どんな話なのかしら??

 ほか、島田荘司6歳の写真(!)が見られるページ、組曲「龍臥亭事件」楽譜、フォトエッセイ等々、かなりのボリューム。ひとつ注文があるとすれば、(「後書き」で島田氏ご本人もボヤいて(?)いらっしゃるのですけど)ちょっとでいいから、軽〜い笑い話エッセイも読みたかった、ということですね。島田氏の書く笑い話は中毒性がありますから。