考える刑事、吉敷!!
飛鳥のガラスの靴 ♪♪♪#
 この作品から、『涙 流れるままに』まで、長く吉敷シリーズは中断する。

 最近通子が冷たい。電話でもつれない。疑問に思った吉敷は、通子の住む天橋立へと赴く。そこで吉敷は通子が入院していると知り、急いで病院に電話をするが、何と、冷たく帰れと言われてしまった。衝撃を受けた吉敷は呑んだくれてぶっ倒れるが、謎の女性に介抱され・・・

 いよいよ吉敷と主任の対立が表面化します。しかし吉敷が本当に戦いを挑むのは主任の向こう側に屹立する日本人論。吉敷は自らの首を賭けて関西へ旅立ちます。
 ぽろぽろと謎がほどけていくように話は進行していきますが、メイン・トリックがちょっと弱いかな・・・という感じ。冒頭で通子がちょこっと登場するのも不思議な感じだし(未来への大いなる伏線だった。島田荘司のよく使う手ですね)、アラも目立ちますが、だからと言って決してつまらないことはない作品であるというところはさすが。冒頭のショッキングさ、四面楚歌の吉敷、期限を切られた捜査と、読者を引き込む要素がてんこ盛りに盛られているからでしょう。また、関西人の私としては、馴染み深い地名がガンガン出てきたのが非常に嬉しい(うちの最寄り駅の隣の駅が出ましたよ(笑))。
 作中の、「すずむし、まつむし」という作品は実際にあるのか知りませんが、シンデレラ型の類型をもつ「米嚢粟嚢」という話なら、「日本の昔話」(柳田国男/著・新潮文庫)に収録されています。興味のある方はどうぞ。
 余談ですけど、光文社文庫版の表紙、いいですね。