チック・コリアのライブ
CHICK COREA IN BLUENOTE OSAKA
チック・コリア
CHICK COREA
「疾走する死者」に登場(?)
 今回はいつものCD紹介ではなく、ちょっとしたライブレポート。2000年8月21日にブルーノート大阪で行われたチック・コリアのライブの模様をお届けします。
 その日、開場は午後六時。ライブのスタートは午後七時でした。六時ちょっと前くらいにブルーノート前に到着した私が目にしたのは、まず人の群れ。地下の入り口から地上の歩道にまで列が出来ています。人々の後ろに並んで、チケット確認の順番を待ちました。
 そして入場。ブルーノート内部は薄暗く、正面のステージには立派なアコースティック・ピアノが鎮座していました。ピアノを囲むようにテーブルがいくつも配置されています。席に案内され、とりあえずウイスキーを注文。まもなくやってきたそれを嘗めながら、ライブの開始を待ちます。
 やがて拍手に包まれながらチックがやってきました。やはり昔の写真と比べるとでっかい(横に)。ひょっとしたらオスカー・ピーターソンにも負けていない・・・そんなことはないか。
 ブルーノートへようこそとか、ここはリビングのような雰囲気だとかいうおしゃべりが少しあり、やがて一曲目の演奏がスタート。ピアノ・ソロ・アルバムの発売を記念しての来日ということですから、この日は一人での演奏です。ブルーノートは狭いので、ピアノの音がよく聴こえます。それはまさに、洞窟の奥深くで水の滴る音を聴くかのような澄んだチックの音。鍵盤の端から端まで使い、時に激しく、時に静かに、時に楽しく弾く。彼の演奏は聴くものをとらえて決して離しません。
 圧巻だったのがライブも終わりに差しかかった一曲。チックはどこからか、タンバリンのような小さな太鼓と、振るとカシャカシャと音が鳴る、木片をたくさん結び付けたような楽器と、ティンパニを打つようなバチを取り出しました。それからマイクに向かって、親友パコ・デ・ルシアとかブラジルとかなんとか言ったように思えたのですが、何だろうと考えている間もなく、彼はいきなり立ったまま太鼓を手に持ってバチでたたき出しました。時々カシャカシャと木片のかたまりも振ります。カシャカシャ、タンタンタン。おや、音楽だと感じたその時にはもうチックは太鼓と木片とバチを置いて椅子に座り、ピアノの演奏を開始していました。
 ここからがまた凄い。まるでピアノの隅から隅まで使い尽くすと言わんばかりの演奏が続いていきます。両手で普通にピアノを弾いたり、左手でピアノを弾いたまま右手だけ使って目の前に置いておいた太鼓でリズムをとったり、木片でピアノのへりを叩いて音を出したり。バチでピアノの弦を叩くわ、はたまた指で弦を弾くわ。もうありとあらゆることをやって音楽を作り上げてゆきます。観客も大喜びでした。
 全ての演奏が終わると再び拍手に包まれて、チックは退場して行きました。しかし拍手は鳴りやまず、やがて手拍子に変わります。ステージに戻ってきたチックは、アンコール演奏を開始しました。曲目は「アーマンズ・ルンバ」。彼のオリジナルの中でも高い人気を誇る名曲です。アンコールにこれを持ってくるというのがまた嬉しい。
 そんなこんなで、午後八時半にライブは終了。チックの音はたっぷり堪能できたし、ライブ中に冗談をとばしたり、一曲終わるごとにきちんとお辞儀をするチックの姿も印象に残りました。楽しい楽しい夜でした。