インクレディブル・ジャズ・ギター
THE INCREDIBLE JAZZ GUITER OF WES MONTGOMERY
ウエス・モンゴメリー
WES MONTGOMERY
短編「疾走する死者」
『異邦の騎士』
『水晶のピラミッド』に登場
 まずご紹介するのは、おそらく島田作品登場回数ナンバーワンの曲「エアジン」を収録した、ウエス・モンゴメリーの「インクレディブル・ジャズ・ギター」です。
 ウエス・モンゴメリーとは1960年代に活躍したジャズ・ギタリスト。独学で身につけた素晴しいテクを持ち、どんな難しい曲でもにこにこしながらノリノリで弾いたという伝説があります。しかし素晴しいテクとセンスを持ちながら、家族を愛するがゆえに地元から離れようとせず、長くメジャーで売れることはありませんでした。60年代に入ってようやくヒットを次々と飛ばしましたが、1968年、43歳の若さでこの世を去りました。
 「エアジン」はウエスの最高傑作と推す人も多い「インクレディブル・ジャズ・ギター」の一曲目です。『異邦』では「その信じがたいスウィング感」と表現されていましたね。楽しげに弾きまくるウエスの姿が目に浮かぶような、アップ・テンポでノリのいい曲です。しかしその楽しさのなかに漂う「乾き」や「哀しみ」を聞きのがすわけには行かないでしょう。だからこそ、御手洗達は深海魚に向かってエアジンを放射したのでしょうね。
 ウエスという人はテクばかりが取り上げられ、何かといえばオクターヴ奏法だと言われます。しかしこのテクも現代の水準でいえばそれほど驚異的とは言えないそうです。それでも今なおウエスが愛されているというのは、やはり彼のスピリッツやセンスが曲から溢れてくるからなのでしょう。