ファッション刑事吉敷!
寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 ♪♪♪#
 吉敷デビュー作。牛越・中村両刑事もゲスト出演。

 マンションの浴室で女の死体が発見された。死体は浴槽の水の中に浸けられ、顔の皮が剥ぎとられていた。死亡推定時刻が割り出される。しかしその時刻の被害者は寝台特急「はやぶさ」に乗っていたのだった。

 吉敷のデビュー作。結構面白い話です。それも島荘の人物描写の巧みさのおかげでしょう。無論トリックも安心して読めるし、ラストのどんでん返しも効いてます。ミステリとしては美しい作品でしょう。ただ、「吉敷もの」としては少々見劣りする作品かもしれない。吉敷もののなかで最も社会性・メッセージ性が薄く、謎ときのみに終始するからです。何より、吉敷が「普通の刑事」なのが今読むと違和感ですね。捜査力、推理力は今と変わらず素晴しいのですが、やっぱ・・・若いのか?
 出た当時の衝撃は想像以上だったでしょうね。トラベルミステリーなのに猟奇的描写、丁寧に編まれた時刻表トリック、どんでん返し・・・オイシイとこいっぱいですもの。しかし良くも悪くも初期島田作品色が濃いです。この『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』、私は社会派っぽい見た目の本格だと思います。社会派全盛の時代に島田荘司が世間へ叩き付けた挑戦状だったのかも知れませんね。