アニメ「七人のナナ」がいいのです。

わたくし、「ナナ」は最初の方を見逃していました。何せこのアニメ、かの「フルーツバスケット」の後番組。「フルバ」を見終わってお腹いっぱい気味になってしまった私は「ナナ」を見る気力が湧かなかったのです。
しかしそれは間違いでした!そもそもスタッフがすんごい(いろんな意味で)。監督が今川泰宏氏、キャラ原案が吉崎観音氏、キャラデザインが西田亜沙子氏。ああすごい。最初から見ておくべきでした(後悔)。

そして内容もすんごい。監督サンが監督サンだし、どんな強烈なロボットアニメを見せてくれるのか、いやいやタイトルからして流行のハーレム型美少女アニメ(?)かもしれないぞ、なんてのん気に考えていた私は本当にアホだった。

何しろテーマは「受験」。戦闘にもハーレムにもなりません(なったアニメもあったけど(笑))。もちろん逆さまになって解答用紙に鉛筆を走らせたりはしません。主役・鈴木ナナは、ごく普通に学校(特進クラス)に通い、テスト前はごく普通に徹夜します。しかも成績悪め。
この普通の受験時代に起こった意外な事件が、主役・ナナの「分裂」。(なんだかよくわかんないですが)プリズムとかいうものの力でナナはさまざまな個性を持った七人に分裂してしまいます。さらにその力を使って、ヒーロー「ナナレンジャー」に変身できるようにもなるのです!
そしてここから「ブレードランナー」ばりのサスペンスフルな展開が・・・起こらないんですね。

結局七人は、時にぶつかり合い、時に協力し合いながら(周囲にばれないように)共同生活を始めます。ナナレンジャーにしても、作品にちょっと味をつけるスパイス程度にしか活躍しません。全体的に話は、世界を救うとかいう風に大袈裟にはならず、平凡な受験生活に密着してゆっくりと進行します。(時々は、お楽しみのスラップスティックもありますが、やっぱり深刻にも大袈裟にもなりません)

つまり、受験時代によくある風景を、ナナの分裂やナナレンジャーへの変身をスパイスにして、ゆっくり描き出す。それが「七人のナナ」のカタチのようです。

そしてもう一つ、「七人のナナ」をつらぬくのが恋愛というファクター。主役・ナナは神近くんという少年に恋をしていて・・・
と、言ってもやはりドラマみたいな激しい展開はほとんどなし。せいぜい神近くんと話が出来て喜ぶ、といったくらい。今や少女マンガでもここまで地味な恋を展開している作品は少ないです(笑)。

しかし、「七人のナナ」を見て、受験期を終えた視聴者は思い出すでしょう。あのころの不安や葛藤を。受験期を迎えていない、あるいは真っ最中の視聴者は自分と重ね合わせるかもしれません。何もプリズムがなくたって、たくさんの自分が喧嘩や協力をして問題に立ち向かう、という経験は誰でも自分の内側でしているはず。ましてや受験期ならば、です。七人のナナたちはそれを象徴している存在。ヒーロー・ナナレンジャーはその不安や葛藤から一歩踏み出すためのちょっとした勇気、とでも言えるでしょう。それならば、「七人のナナ」という物語は、あながち荒唐無稽なものでもありません。

受験、恋、分裂、変身。
頭の中にあることといったら受験のことが6割で恋のことが4割。そんな、誰の記憶にもある、真直ぐだけどふわふわとした夢のような時代。
「七人のナナ」は、そういう時代をばっちり見せてくれる良作です。
(2002/4/18)




*ただし、物語が佳境にさしかかってどうなるか、というのはちょっと微妙。
*思わぬ大風呂敷を広げる可能性も・・・
*個人的には、そうなって欲しいような欲しくないような、複雑な気持ち(^^;)



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