線画篇

 ここからしばらく、あんまりCGとは関係ないかも(笑)。

1.何を描くか決めよう

 絵を描いてみたいけど、何を描けばいいのかわからない・・・という悩みを持つ方は、実は多いのです。それで結局絵を描くのを断念したり・・・
 これはもうずばり一言。好きなものを描く!それだけ(笑)。
 好きな漫画やアニメのキャラクタでもいいし、綺麗なお姉さんや可愛い女の子、男の子、カッチョいいお兄様や筋肉が素敵な格闘家、何でもよいのです。うまく描けないからいつも断念しちゃうんだよー、という方。まぁ、なかなかうまくは描けないもんです(笑)。はじめのうちは見本の丸写しでもいいと思いますよ。
 単純なものから描いていくのもいいです。ドラえもんとかね。ちなみにこのドラえもんというやつ、大変勉強向きの素材です。線が少ない。曲線が美しい。丸っこいので光とカゲが付けやすい・・・などなどの理由からです。ポケモンなどもいいですね。プリンやピカチュウがオススメです。
 とにかく、さまざまなものに接して、自分の好きなものを見つけるのが肝要。
 さて、今回サンプルとして1から10まで追ってゆくのは、2001年6月分の月イチCG。
 月イチはいつも季節モノになりやすい傾向があります。6月は梅雨。それなら梅雨に因んだ絵、かつ、ラブリーなものを描きたいな、と思いました。そこでぱっと思い浮かんだのは長靴に傘の女の子、という絵です。そぼ降る雨の中、傘をさしてちょっと振り返る少女、そんなテーマで決定!

2.描き始めよう

 a.大まかなところを決める
 描くものが決まったらいよいよ描き始めです。もちろん最初から描くものをがっちり決める必要はありません。描いてるうちにころころ変わってゆくこともよくあります。
 今回設定したテーマ、「見返り少女」(←勝手に命名)に合ったポーズをクロッキー帳に落描きしてゆきます。この時点ではポーズを決めるだけなので、服も着てないし、顔もありません。細かいところは決まっていないので、こちょこちょとみみっちく描きなぐってますね(笑)。
 何体か描いたところでよさそうなポーズが生まれたので、これをもとに描き始めることにしました。(図1)

 この時点で人物の身長は5センチていど。これでは何もできないので、400%拡大コピーでB5サイズまで身長を伸ばしました。(図2)最初っから大きく描けばいいようなもんですが、大きいとバランスがとりにくいし、失敗したらケシゴムで紙がびよびよになるし、何より私の場合、ちっちゃくポーズを下書きしたほうがいいポーズが生まれるんです(笑)。だからこの「ちっちゃいポーズ拡大コピー作戦」は大変重宝しています。

 この時点で一度、紙を裏返して透かして見てみましょう。ポーズが反転して見えます。その時、違和感を感じるようならちょっと形を修正したほうがよいかもしれません。のちのち辛くなってくることがあります(--;)。

 b.細かいところを決めてゆく
 さて、ポーズが出来たら、その上に白い紙を重ねましょう。マスキングテープ(セロテープでもよし)で、ズレないよう貼り合わせると、線がうっすら浮き上がるはずです。その状態でトレースをしてやるのです。下敷きに白っぽいもの(白い紙を重ねたものなど)を使うと、線がかなり浮き上がって見えます。
 それでは、いよいよ本格的にキャラクタを詰めてゆきます。この際、キャラクタのプロフィールなどを設定したり、いくつか候補を挙げてみたりと、人それぞれの詰め方をしますが、私の場合はとりあえず描き始めるという最も乱暴な方法で詰めてゆきます。女の子を描く場合は、女の子への「こだわり」の命ずるままに線を引くわけですな。
 うっすら映っているポーズを参考にしつつ、ある程度完成品に近い線を引きましょう。歳若い少女ですから、それなりに見えるように・・・
 まず、もともと描いたポーズは腕や脚が太すぎるので、細めに修正しました。その修正したポーズに対して服や顔を上から描き込みます。
 服装はソデのない短いワンピース。ワンピースの腰のくびれを抑えれば、少女らしさが引き立ちます。さらに太い長靴と小さい傘。黄色だろやっぱ、とこの時点で思っていたりする(笑)。他にもやっときたいポイントはたくさん。肩の曲線、膝裏の曲線、首筋の曲線などなど、少女らしく・・・
 でも、もっとも強調したいのは、ワキ!実のところ、このポーズだと、ノースリーブにすればワキが見える!と考えて服からソデをとっぱらいました(笑)。大きく開いたワキと小さなシワ。これ基本。
 髪は短め。広いおデコを見せると、幼さが強調されるので前髪バックに。しかしこの処置は、私のきまぐれにより、後で変更されてしまいます(笑)。
 ところで、どうして執拗なまでに少女らしさを強調するかというと・・・実は描いているうちに思ったより頭身が上がってしまったため(^^;)。本当は三頭身強にするつもりだったんですが、いつのまにやら一頭身上がっていたのです(^^;;)。(まぁ、こんなトラブル、よくあるよくある(笑))これで少女らしさをセーブしてしまうと、あまり可愛くない・・・と、いうことで思いきり少女らしくすると、どうやら満足できるものになりました。この思いきりというのはなかなか大事なことで、恥ずかしがってセーブした描き方をしたりすると、後悔することが多々あります(苦笑)。セーブするのか、思いきりいくのか・・・生きるべきか、死ぬべきか(笑)。
 そういうことで(?)、今回は思いきりいっときました。(図3)
 さて、線画完成に少しずつ近づいているようですが、実はまだまだ道のりは長い。いろいろ修正すればもっとラブリーになるかもしれないし、その後、線をクリンナップしないといけない。それに、最大の難関、傘を描かなきゃあ・・・この時点で、傘めっちゃヘタやん・・・

3.下書き完成までこぎつけよう

 この時点で絵は何とか形になってきたものの、まだまだ線が雑。もちろん傘もまるでダメな状況です。ここらあたりを詰めて、線画を完成させましょう。
 ここで私は貼り合わせていた紙を外し、トレースし終わったキャラクタを見て、どこか変えて良くなる点はないか、と考えます。再び裏から透かして見て、形が崩れていないかチェックすることもも忘れずやりましょう。

 まず目についたのは傘。もうちょっとよくならんのかいなと思い、少し修正してみましたが、やっぱりダメ。よってあとまわし(笑)。
 そんなこんなやっているうち、髪形を変更することを思いつきました。なぜかというと・・・描いている最中、アニメ「探偵少年カゲマン」を見てたんですな。で、それに出てくるテンコちゃんというヒロインにピンときたわけです。ビビビです(あほ)。ハート型の前髪が特に素敵だったので、前髪を下ろそうと・・・まぁ、どうでもいい理由ですが(笑)、ネタはどこにでもころがっているという一例です。
ともかく、もともとの髪形より良くなったと自分では思っております。(図4)

 修正が終わったら、描き上げた少女の上に新しい紙を貼り合わせましょう。再びトレースの開始です。
 まず雑な線をキレイにします。さらに目や口のバランス、首や肩の線などを確定してゆきます。
 もう一つ、忘れちゃいけない傘の存在。こういった小物はなかなか難しいです。形も決まってこないので、ちょうどいい写真を見つけて参考にしました。もちろん実物を参考にしてもよいでしょう(むしろそのほうがよい)。
 傘は出来る限り写真どおり描くことを心がけました。小物をリアルに描くと、いい効果をあげられることが多いからです。写真を参考にしたこともあり、最終的にはまだマシな傘ができ上がりました。(図5)

 ここで紙をはがし、またまた新しい紙を貼り付けます。これからいよいよ線画完成に向けて、最後のトレースになります。ここまではシャーペンで描いて構わないと思うのですが、最後のトレースは別。鉛筆のご使用をおすすめします。
 最後のトレースを行うにあたり注意するのは、とにかくキレイに、精密に線を引くこと。CGの仕上がりに影響してきます。鉛筆は頻繁に削って、常に尖らせておきましょう。また、線を「閉じる」ことも忘れてはいけません。半端に切れた線を引くと、これから困ることになります。ムードたっぷりの少女漫画のごとく、切れ目のある細い線を使いたい場合、塗りの技法がこれから解説するものとかなり異なってきます。CG経験がまるでない方は、キレイに仕上げるのが困難になると思うので、今回はかっちりした、閉じた線で仕上げてください。
 線を引き終って、それで完成!でも良いのですが、ちょっと色気を出して、線にタッチ(強弱)をつけてみましょう。ただ線を引いてもタッチはつきますが、微妙なタッチになってしまい、私も含め、常人には使いこなすのが難しいかと思われます。  最もお手軽にタッチをつける方法は、線の二度引き。一度引いた線の上からもう一度キレイに線を引くだけです。これだけで随分違いますよ。
 意識的に各部分の線を太くしたり細くしたり重ね描きするのもオッケー。
 これで、完成!(図6)

4.まとめ

 三回ほどトレースして完成しました。ここまで何回もトレースしなくってもいいじゃないか、と言う方もあるかもしれませんが・・・実際、修正を繰り返していると、線が何重にもなったり、ケシゴムで紙がびよびよになったり、真っ黒になったりしてくるのです。この状態はあまり愉快ではありません。キレイに仕上げるためにも、心機一転新しくトレースするのが逆に早い、との考えから、私は何回もトレースをするのが好みです。特に今回は傘を描くのに難航しましたしね。結局トレースが、私が線画を描く場合のキーなのかな?
 さて、ここまでに、ずいぶん細かく工程を紹介したと思いますが・・・とりあえず、描きたいけど描いたこと無い、という人に絵を描く雰囲気を見てもらえれば、と思いまして。もちろん、自分なりの方法がある人などはその方法でやるのが一番よいと思います。ファンシー系キャラクタなど、線が少ない絵を描く場合はもっと簡単に済ませればいいですしね。


ちょっとしたコラム 「人体を描く」
 楽しんで好きなものを描くのが大事、とは言っても、やっぱり誰しも上手く描きたいもの。また、自分の描きたいものを理想の形に近付けるためにも、技術は身に付けておいた方が嬉しいですよね。技術偏重になってしまうと(技術こそが自分のテーマだ、という人は別にして)嬉しくないですが、基本は知っておきたいところです。私もまるで上手くありませんが(^^;)、それでも描き始めたころに比べたらずいぶんとマシになりました。どうやって技術向上を目指すか、最も描く機会の多いと思われる人体について、勉強法を紹介したいと思います。
 人体を描くのは大変に難しいです。これはどんなに上手な人でもそう感じるみたいです。複雑な形が一番の原因ですが、この複雑な形をパーツに分けるのが人体描写の基本になるようです。私の場合は頭、首、胸、腰、あと腕と脚を三分割して描きます。これらをデッサン人形のように組み合わせて描くわけですが・・・
 その形や組み合わせ方や大きさの比率などの基本的なところは大体決まっているのです。他に人体の頭身や重心、可動部分のあしらいにも定石のようなものがあります。
 目鼻など、顔のパーツの配置法も定石があります。最も描くのが難しい部位の一つ、手のひらもパーツに分解して描くのが定石。
 これら定石を覚え、あとはひたすら練習。そうすると人体の描写はそれなりにうまくなってくるはずです。この段階に入ると、絵を描くのが大変楽しくなります(^^)。デフォルメも無理なく効いてきます。
 で、その定石はどうやって覚えるかというと・・・美術の本を買う(笑)。
 私の場合、初心者向けの簡単な技法書を一冊買いました。確か「人物画の描き方」とかいうのだったと思います。大変わかりやすい本で、勉強になりました。マンガの描き方を解説したような本でもいいのですが、やはり一冊くらい普通の美術技法書を読むのがいいかなと思います。マンガの描き方のほうは、後から読むのがよいでしょう。なぜかというと、美術技法書というのは本当に基本的な技術を教えてくれる本で、マンガ技法書というのは主に人体のデフォルメのやり方を解説してくれる本だからなんですね(もちろんストーリーの作り方やらペンの使い方やらの解説も載ってますけど)。でも、マンガ技法書の中にも丁寧に人体を一から説明している本もあるようですから、それを選ぶのもよいかも知れません。
 他、昔から良く言われる「とにかく好きな作家の絵を模写」作戦や「とにかく写真模写」作戦なども技術向上に役立ちます。さまざまな方法を組み合わせるのが一番いいと思います。
 また、実際絵を描く場合、写真とか、何か見本を用意すると仕上がりが劇的によくなる場合があります。ぶっちゃけた話、女性を描く場合はいわゆるエロ本なんかが本当に役立ちます。マッチョを描く場合はボディビル雑誌なんかを買ってくるわけですね。エロ本もボディビルも裸ばっかってのが役立つ(いやホンマ)。




To Next Page→ はじめに | 準備篇 | 線画篇 | 彩色編 | おわりに



メールをどうぞ:akijan@akijan.sakura.ne.jp